ジョセフ・マーシャル
「キリスト賛歌のレトリック」
「キリスト賛歌のレトリック」
(87号「フィリピの信徒への手紙」より)
この賛歌がパウロの手紙に先立って存在し、用いられていたという説が正しいとすれば、この種の賛歌の多面的な機能が用い易いものであることは容易に想像できるだろう。
この賛歌はいくつかの異なる背景を同時に仄めかしたり、それらを結合させたりすることもできる。
共同体の様々なメンバーに訴えかければ、単一の伝統ではなく、いくつかの伝統を統合し、結びつける力となり得る。
これが礼拝の中で賛歌として使用されていたのだとすれば、神とキリストにまつわる神学的な考えを伝えていた可能性も排除できない。
さらに言えば、この賛歌が劇的に神話を用いて逆転を物語っているからといって、神話のもつ社会形成作用の側面が除外されるわけではない。
ひとつのイメージが救済的であると同時に模範でもあることもあるのである。
このような神学的信念と共同の行為がこうした賛歌に触れる者の生活に実際的で政治的な影響を与えないわけがない。
そこでは家庭、街、そして帝国の運営といった事柄を含む古代の文脈の中で交錯した領域の倫理が反省的に捉えられているのだ。
この賛歌のイメージが現代においても継続して有用であり、現代にも適用可能であると考えるとき、そのような交錯点は現代の様々な文脈においてわたしたちを立ち止まらせるだろう。
特 集
フィリピの信徒への手紙
第87号 2014年12月
定価2000円+税
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