2014年12月21日日曜日

パウロの苦しみと喜び


L・G・ブルームクウィスト
「喜びによる反転
(87号「フィリピの信徒への手紙」より)



歴史批判的研究はパウロの世界を理解する助けとなる資料を利用できるようにすることで聖書研究に大いに役立ってきた。

歴史批判的研究の手段を通じて、テクストとその構成部分が適合する規範的な歴史的、文化的背景を確定することができる。

そのような研究はフィリピの信徒への手紙のような手紙を理解するときの背景を教えてくれる。



 しかし、歴史批判的研究は聖書の記者が現実をどのように「引き受け」、それを再創造したか、またレトリックを用いて言えば、新たな文化をつくるための新たな言説をどのように「発明した」かを常に示してくれるわけではない。

フィリピの信徒への手紙を新たな言説の発明として読むとき、苦しみと死について予期されることにかかわる既存の文化的筋書きを用い、同じ現実へのもうひとつのアプローチをつくり出すためにその筋書きを再構成したものと理解することができる。

フィリピの信徒への手紙におけるパウロは苦しみと死が全体に行き渡った世界を前提とすることで、他のことでは喜びがあり得ない世界への新たなアプローチを発明し、福音のための苦しみと死をまさに喜びと命への道とすることで、苦しみの回避ではなく、苦しみを直観に反して受け入れることを求める新たな態度と行動を強く促したのである。


 

特 集

フィリピの信徒への手紙

第87号 2014年12月
定価2000円+税



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