クリスティン・M・スウェンソン
「エデンの東を守り、保つ」
(84号特集「他者へのまなざし」)
神はカインに語る。
カインが自分の職業とされた仕事、すなわち神が園に住まわせた人間を部分的に規定していた仕事をするとき、地は「もはやお前にその力を与えない。
お前は地上で落ち着くことなく、さまよい歩く」(12節。私訳)。
聖書では接続詞が非常に多く用いられているので、この二文の間に接続詞がないことは非常に目立つ。
この接続詞の欠如が示唆するのは、土地がその力を与えないということとカインの不安定さという二つの異なる事柄を語る別々の二文として12節を読むべきではないということである。
むしろ、土地がカインを拒否するということがカインの不安定なのである。
言い換えれば、カインの安定とは土地との正しい関係なしにもたらされることはないということである。
土地自体に拒絶されたカインはさまよう根のない生活に追いやられる。
語り手はこのことを物語の終わりに強烈な語呂合わせで強調する。
カインが「落ち着く場所」は「さまよい」という意味をもつノドという名の地なのである(16節)。
カインは7節で神が発した警告を反映した形で、自分の運命について「罰が大きすぎて耐えられません」と訴える(13節)。
「耐える」に当たる動詞〈ナサー〉は、正いことをしているなら顔を上げていられるはずと言ったときに神が用いた動詞と同じ動詞である。
語り手は以前に用いられた後を思い出させることで、カインがどれほど脇道に反れてしまったかを明らかにする。
カインは正しいことをした結果として顔を上げるのではなく、間違った行為ゆえの面倒な結末に耐えることができないと叫ぶ。
カインはこの苦しい応答において、自分の行為によって明らかになった関係には別の次元があることを示している。
自分の運命についてのカインの解釈は、神の存在の経験を自分の奉仕の対象である土地と結びつけている。
彼は言う—「今日、あなたはわたしを土地(の表面)から追放した。
そして、わたしはあなたの顔から隠される」(14節)。
カインの応答のキアスムス的な並行関係が土地と神を結びつけている。
「あなたはわたしを追放した」は構造的に「わたしは隠される」と関係し、「あなたの顔」は「土地の表面」と対にされている。
二つめの組は同じ単語で〔「顔」「表面」はヘブライ語では全く同じ語〕、付される前置詞も同じ「〜から」なので、その関連は特に強い。
カインの応答は土地そのものがカインの神体験を仲介していることを明らかにしている。
土地との正しい関係が神の存在をカインが経験する手段であった。
カインが神を知るのは土地を通してなのである。
特 集
他者へのまなざし
第84号 2014年3月
定価2000円+税
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