バーバラ・リード
「どちらの神がともにいるのか」
(89号特集「とともにある神 マタイ福音書」)
マタイが描写するのは、限りなく慈悲深い神が与えてくれる深い赦し、愛、忍耐であり、その意思は常に拡大し続ける慈悲の連鎖の中で永遠にわたしたちとともにある。
しかし、このメッセージは非常に受け入れるのが難しい。
神は罪に対してその代償を求め、その愛を得るためには努力が必要であるとする話の方がずっと簡単に理解できる。
正しい秩序の感覚が報復を行わない神によって試されているのである。
このような神のイメージは理解し難いだけでなく、他者との関わりの中で同じように振る舞うなど到底無理に思える。
では、悪人のやりたい放題を許すということなのだろうか。
終末の譬え話はこの疑問への答えなのである。
神の方針に反する人に厳しい結末がもたらされることを神は積極的に望んでいるわけではいないが、そうした人々は自らの選択によって自らのもとに返ってくる暴力の連鎖を生み出している。
マタイは神の慈悲深い招きに対する倫理的な応答の重大さを描いている。
わたしたちが慈悲と寛大という身に余る贈り物を受け入れ、自分たちが変わろうとする限り、神は常にわたしたちとともにある。
特 集
神、われらとともにあり
マタイ福音書
第89号 2015年6月
定価2000円+税
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