ウルリヒ・ルツ
「芸術表現におけるイエスの復活」
(88号「イースターの祈り」)
イエスの復活という出来事の最古の描写は新約聖書外典の「ペトロ福音書」の中に見られる。
ペトロ福音書は一五〇年より少し前に書かれたと推定されるが、文書全体は残されていない。
受難物語の長い断片がひとつと、それよりも短いものが数片発見されたのみである。
この福音書は明らかに、共観福音書がすでに存在していることを前提としている。
著者は共観福音書をほとんど暗記していたのだろう。
そう考えると、他の福音書についての数々の言及、ことにマタイによる福音書からの夥しい引用を最も容易に説明できる。
ペトロ福音書における復活の物語はマタイによる番兵の描写を前提としている(マタ二七62—66)。
そこではイエスの復活は神話的、宇宙的な次元から描かれている。
レイモンド・ブラウンによる訳をここに記そう。
[32] そこに居たものすべてで大きな石を転がし、百人隊長と番兵たちとともに、墓の扉の前に置いた。
[33] そして、扉を七か所、蝋で封印し、幕屋を立て、見張った。
[34] 安息日が明けるころ、エルサレムと周辺から、封のしてある墓を見ようと人の群れがやって来た。
[35] しかし、主日が明けたその晩、二人ずつの兵士が番にあたっていたとき、天で大きな声がした。
[36] そして、兵士たちは天が開き、光り輝く二人の男が降りてきて墓に近寄るのを見た。
[37] すると、墓の扉のところに置いてあった石が自ら脇へ転がった。そして、墓は開き、その若い男たちは二人とも中へ入って行った。
[38] 番兵たちはそれを見て、(同じように見張りにあたっていた)百人隊長や祭司長たちを起こしに行った。
[39] そして、自分たちはいったい何を見たのかを話す間に、今度は墓から三人の男が出て来るのを見た。二人が残る一人を支えているようであった。三人の後には十字架が続いて出てきた。
[40] 二人の頭は天に届かんばかりで、手を取られているもうひとりの人の頭は天を越えていた。
[41] そして、天から「冥府へ宣教に行ってきたのか」という声が聞こえた。
[42] すると、十字架から「はい」という敬意に満ちた答えがあった。
[43] 彼ら(そこにいた者たち)は逃げ出して、ピラトに報告するための相談をした。
[44] 彼らがまだ考えている間、再び天が開き、ある男が降りてきて、墓に入った。
[45] これらのことを見て、百人隊長たちは(見張りをしていた墓を離れ)ピラトのもとへと夜の中を急ぎ、大きな苦悩をもって、しかと見たことを話し、「あの男は本当に神の子でした」と言った。
特 集
イースターの祈り
第88号 2015年3月
定価2000円+税
0 件のコメント:
コメントを投稿