2015年9月27日日曜日

Generativity 次世代育成能力



ハリー・R・ムーディー
W・アンドリュー・エイケンボーム
「世代を超えた環境倫理に向けて」
(90号「年をとるということ」)



人は自分の家族の中で世代をまたいだ義務、つまり親の子どもに対する義務、子どもの親に対する義務について考えることに慣れている。

親族集団と家族は持続可能性、つまり第一に生き物であることを示す誕生と死のサイクルという生物学上の基礎であり続けている。

持続可能性のこの側面は非常に根本的なものであるため、偉大な心理学者であるエリク・エリクソンはこれを人生の様々な段階における徳目の図式の中で強調している。

エリクソンは成熟した大人にとって最も重要な徳は「次世代育成能力」と理解していたが、ジョン・コートルはそれを「自分を長く生かすこと」という注目すべきフレーズに練り上げている。
 



「持続可能性」という語は環境保護思想の標語として広く普及し、その語は中身の濃い複雑な歴史をもつことになった。

環境保護論者は持続可能性について語るとき、エリクソンの次世代育成能力という徳のようなものを援用するが、たいていはそれがもつ宗教性には言及しない。

実際には、大きな世界宗教の実践の核心には常に持続可能性がある。

そうでなければ、それらの宗教は生き残らなかっただろう。

これからの世代に対する義務の出発点は感謝、つまり自分たちがこれまでにいた世代の人たちから受け取ったものを認めることにある。

聖パウロの「いったいあなたの持っているもので、いただかなかったものがあるでしょうか」(Ⅰコリ四7)という問いよりそれをうまく表現しているものはない。

つまり、自分たちより前にいた人たちへの感謝は自分たちより後に来る人たちへの義務につながっているのである。






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特 集

年をとるということ

第90号 2015年9月
定価2000円+税



2015年9月20日日曜日

90号「年をとるということ」目 次


9月30日 発売開始




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年をとるということ

第90号 2015年9月
定価2000円+税




まえがき





マーガレット・M・ガレット(榊原芙美子・訳)Margaret Morganroth Gullette
知恵と認知症 ―アメリカ社会はこの二者択一に陥ったのか

    社会が生み出してきた「知恵か認知上の不全か」という二分法打をち破るために、著者の母親が九〇代を迎えたときの具体的な状況を描くことが試みられる。アメリカの福祉一般が直面している危機には医療診断や介護上の失敗もあるが、伝統的に老齢と知恵の間にある決定的な結びつきがもたらし続けている問題も小さなものではない。この問題に希望を見出すには、異なる考えに目をやり、年長者に対する尊敬を回復し、知恵が見出されるときにはいつでもそれを認める必要がある。 
     《キーワード》 老人差別、アルツハイマー病、認知不全、協働知能(Collaborative intelligence)、認知症、記憶障害、多重知能、知恵、知恵文学
     


ダグラス・A・ナイト (標珠実・訳)Douglas A. Knight 

ヘブライ語聖書における年齢観
    ヘブライ語聖書において、老いや高齢者について言及しているテクストは古代イスラエルにおける実際の社会経済的背景に照らして理解する必要がある。資料が示すところによれば、当時の寿命は四〇歳前後であり、そのくらいの年齢で老人とみなされ、老いの症状に悩まされていたことが分かる。また、老いの苦痛について描写している周辺文化の文学についても検討する必要がある。
     《キーワード》 老化、老い、ヘブライ語聖書、イスラエル、社会史、古代近東、クムラン、メギド、メロン


ハリー・R・ムーディー/W・アンドリュー・エイケンボーム (吉谷かおる・訳)
Harry R. Moody and W. Andrew Achenbaum
世代を超えた環境倫理に向けて―連帯、持続可能性、管理責任について―
    環境問題の宗教的基礎づけが環境倫理の基礎、すなわち世代を超えた義務と見なされることはほとんどない。ここでは連帯、持続可能性、管理責任という三つの倫理的原則を提示する。これら三つが宗教的に根ざしていることがこれからの世代のためになすべき義務を明らかにしている。「連帯」はまだ生まれていない人間にも人間以外の種にも及ぶ。「持続可能性」は過去と未来の世代との関係から考察される。「管理責任」は地球規模の環境変化を理解し、絶望ではなく希望によってそれに対応する今日の世代に課されている責任の絶対的原理である。
    《キーワード》 高齢化、連帯、持続可能性、管理責任、世代、環境神学、環境

ヘンリー・C・シモンズ (古本みさ・訳)Henry C. Simmons
ケアへの挑戦
    「人生の残り三分の一」におけるケアに対する会衆の期待は教会従事者に課題をもたらしている。寿命が伸び、病死が増加するにつれ、「人生の残り三分の一」という期間は今や長く、複雑なものとなっている。現代における社会および教会の人口動態はケアに対する新しい要求と限界を生み出し、ケアの個人的な要求に応えるのが困難な課題となる教会従事者もいる。ここでは、長期間にわたって持続される会話、信徒間の儀式と経験の分かち合い、「~であるかのように」生きること、政治的なホスピタリティという四つの方策について考えてみる。
    《キーワード》 老い、人口動態、社会、教会、資源、親、ケア、儀式、環境
     
トーマス・リンチ(吉岡誠悦・訳)Thomas Lynch
よい葬儀と「空の墓」
    キリスト教の決定的な真実とは「空の墓」である(ヨハ一九38―42)。それゆえ、キリスト教の神学は終末論や生と死に対する最高の希望によって形成される。したがって「よい葬儀」とは、終末のための演習なのであり、死者の世話をすることによって、どのように生に仕えるかということなのである。  
    《キーワード》 死、葬式、火葬、記念碑、身体、救い、生存者、物語



テクストと説教の間
エレミヤ書31章1─6節 (ケリー・H・ウィン/標珠実・訳)
ヨハネによる福音書20章19─23節 (ケイシー・トンプソン/齋藤百合子・訳)
エフェソの信徒への手紙1章15─23節 (ギャレット・アンドリュー/齋藤百合子・訳)


書評紹介(標珠実、榊原芙美子、吉谷かおる・訳)
ギルバート・メイレンダー著『人は永遠に生きるべきか ―老いに関する倫理的両義性―』
トーマス・G・ロング/トーマス・リンチ著『よい葬儀 ―死、悲しみ、ケアする共同体―』
ドナルド・H・ジュエル著『聖典の想像力を形づくる ―聖書の真実・意味・神学的解釈― 』
マーヴィン・A・スウィーニー著『タナハ ―神学的・批判的ユダヤ教聖書入門―』



2015年9月13日日曜日

巨人イエス


ウルリヒ・ルツ
「芸術表現におけるイエスの復活」
(88号「イースターの祈り」)



イエスの復活という出来事の最古の描写は新約聖書外典の「ペトロ福音書」の中に見られる。

ペトロ福音書は一五〇年より少し前に書かれたと推定されるが、文書全体は残されていない。

受難物語の長い断片がひとつと、それよりも短いものが数片発見されたのみである。

この福音書は明らかに、共観福音書がすでに存在していることを前提としている。

著者は共観福音書をほとんど暗記していたのだろう。

そう考えると、他の福音書についての数々の言及、ことにマタイによる福音書からの夥しい引用を最も容易に説明できる。

ペトロ福音書における復活の物語はマタイによる番兵の描写を前提としている(マタ二七62—66)。

そこではイエスの復活は神話的、宇宙的な次元から描かれている。

レイモンド・ブラウンによる訳をここに記そう。
 





[32]  そこに居たものすべてで大きな石を転がし、百人隊長と番兵たちとともに、墓の扉の前に置いた。

[33] そして、扉を七か所、蝋で封印し、幕屋を立て、見張った。

[34] 安息日が明けるころ、エルサレムと周辺から、封のしてある墓を見ようと人の群れがやって来た。

[35] しかし、主日が明けたその晩、二人ずつの兵士が番にあたっていたとき、天で大きな声がした。

[36] そして、兵士たちは天が開き、光り輝く二人の男が降りてきて墓に近寄るのを見た。

[37] すると、墓の扉のところに置いてあった石が自ら脇へ転がった。そして、墓は開き、その若い男たちは二人とも中へ入って行った。

[38] 番兵たちはそれを見て、(同じように見張りにあたっていた)百人隊長や祭司長たちを起こしに行った。

[39] そして、自分たちはいったい何を見たのかを話す間に、今度は墓から三人の男が出て来るのを見た。二人が残る一人を支えているようであった。三人の後には十字架が続いて出てきた。

[40] 二人の頭は天に届かんばかりで、手を取られているもうひとりの人の頭は天を越えていた。

[41] そして、天から「冥府へ宣教に行ってきたのか」という声が聞こえた。

[42] すると、十字架から「はい」という敬意に満ちた答えがあった。

[43] 彼ら(そこにいた者たち)は逃げ出して、ピラトに報告するための相談をした。

[44] 彼らがまだ考えている間、再び天が開き、ある男が降りてきて、墓に入った。

[45] これらのことを見て、百人隊長たちは(見張りをしていた墓を離れ)ピラトのもとへと夜の中を急ぎ、大きな苦悩をもって、しかと見たことを話し、「あの男は本当に神の子でした」と言った。






特 集

イースターの祈り

第88号 2015年3月
定価2000円+税



2015年9月6日日曜日

西洋を越えて



テリー・マック
「パラダイムを越えて
(86号「対話を求めて」より)


ニッターもヒックも西洋の哲学、西洋の神学の伝統に属している。

他に何者であり得よう。

ヒックの言葉を別の形で言い換えれば、ヒンドゥー文化の中に生まれた人はヒンドゥー教徒になる可能性が非常に高く、イスラム文化の中で生まれた人はイスラム教徒に、仏教文化の中であれば仏教徒、キリスト教文化であればキリスト教徒になる可能性が高いということである。

また、付け加えれば、西洋哲学の文化は西洋哲学者を生み出すのである。

西洋の哲学者あるいは神学者であれば、避けがたく新プラトン主義的なキリスト教神学、アリストテレスの論理学、カントの形而上学の継承者であり、そこに①キルケゴールの実存主義、②ヨーロッパのロマン主義、③ローマ・カトリック教会の神秘主義、④宗教改革の敬虔主義などの添加物が加えられる。

ニッターもヒックもこの伝統の継承者であり、そのことは彼らの著作に見てとれる。
 


これが彼らにとって避けられないことであり、避けられるはずもないことであったと述べておくことは重要である。

仮にそれが避けられたとしても、それは望ましいことではなかった。

誰でもある視点をもって研究を行う。

何かが可能であるということ、あるいはあり得ないということが分かるのも何らかの視点があればこそなのである。

神学と哲学についての西洋の考え方は重要であり、有益である。

そして、西洋人が自らの考え方を棄てて、たとえば東洋的な考え方を受け入れようとするとき、その結果はたいてい気まずいものになる。


 



特 集

対話を求めて

第86号 2014年9月
定価2000円+税

















2015年9月2日水曜日

緊急告知「安全保障関連法案に反対する学者の会」

「学者の会」アピール賛同者の皆様へ緊急のお願い

緊迫した国会情勢のもと、「学生と学者の共同行動」を大成功させましょう。
佐藤学(「安全保障関連法案に反対する学者の会」発起人・事務局代表)

(1)9月6日(日)は午後3時から午後5時半、新宿伊勢丹前の歩行者天国で、「学生と学者の共同街宣行動」を行います。歩行者天国を埋め尽くしましょう。この街宣行動では、学生と学者のスピーチの他、蓮舫民主党代表代行、志位和夫日本共産党委員長、吉田忠智社会民主党党首、二見伸明公明党元副委員長が、スピーチを行います。(他の野党は返答まち)
 重要な時期の重要な街宣になるので、ぜひ、ご参加ください。当日のフライヤーを添付します。なお、雨天の場合は、歩行者天国は行われないので、新宿駅東口で街宣行動を行います。

(2)9月11日(金)は学生と学者の共同行動第3弾として、午後7時半から国会前の抗議行動を行います。こちらも、こぞって参加してください。

(3)以下のように各地方でSEALDsの行動が展開されます。地方ごとにSEALDsを支援し共に闘いましょう。


【SEALDs】
9/4(金) 19:30~21:30 戦争法案に反対する国会前抗議行動
9/6(日) 15:00~17:30 安全保障関連法案に反対する学者と学生による街宣@新宿
9/10(木) 19:30~21:30 戦争法案に反対する国会前抗議行動
9/11(金) 19:30~21:30 戦争法案に反対する国会前抗議行動
9/12(土) S4LON vol.3[この国で生きる―経済 憲法 安保法制―]第1部 15:00~ 第2部 19:00~
9/14(月)~9/18(金) 戦争法案強行採決に反対する国会前緊急抗議行動


【TOHOKU】
9/4~ 毎週金曜街宣
9/5(土) SALON(詳細未定)
(9/6(日) 弁護士大集会)
9/10 緊急アピール(詳細未定)


【KANSAI】
9/4 (金) 18:30~20:00 戦争法案に反対する金曜街宣アピール@大阪梅田ヨドバシカメラ前
9/11 (金) 19:30~21:30 戦争法案に反対する国会前抗議行動
9/13 (日) 16:00~18:30 戦争法案に反対する関西大行動@大阪 靭公園


【RYUKYU】
9/12(土) 10:00~12:00 サロンvol.2トポセシア(沖縄県宜野湾市我如古2-12-6)
9/19(土) 「沖縄のことは沖縄で決める緊急アピール」(場所未定)

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