〈異本をめぐる詩学について〉
エレミヤ書の伝統的なヘブライ語本文(マソラ本文)と古いギリシャ語訳(七〇人訳聖書)を比較すると、おそらくはギリシャ語訳に用いられたヘブライ語本文の段階で本文上の相違と異本の存在という複雑な構図があったことが分かる。
異本によって改訂があったことが示されるということは複数の版が流布し、読まれていたことを意味する。
ひとつの版が孤立して存在していたということはなく、ひとつの版がまるごと他の版で置き換えられるということもなく、ひとつの版が独り言のようにして成立するというようなこともあり得なかった。
ピート・ダイヤモンド「対話」83頁 (インタープリテイション82号「エレミヤの肖像」)
特 集
エレミヤの肖像
第82号 2013年8月
定価2000円+税